『 ブギー ナイツ 』
Boogie Nights (1997) USA 2h. 32min.
1970年代後半カリフォルニア、サンフェルナンド・ヴァリー、空手好きの高校生エディー(マーク・ウォルバーグ)は地元のダイナーでウェイターのアルバイトをしているところを、ポルノ・フィルムのプロデューサー、ジャック(バート・レイノルズ)にスカウトされ、あっというまにアダルト映画のスター、ダーク・ディグラーが誕生する。 ダークの出演作はことごとくヒットし、ポルノ映画の各賞を総なめにする。彼は十代にして、豪邸、スーパー・カーを手に入れ、ドラッグやパーティーに明け暮れる日々が続いた。アダルト以外にも、得意の空手を生かしたアクション映画も製作されるようになり、全て大ヒットとなるのだが、しかし、時代はフィルムからビデオへの転換期にあった。 ビデオへの転向を蹴ったジャックは、結局、時代の波に置いていかれ、エディーの人気にも翳りが出はじめ、それからは坂道を転げ落ちるように全てを失っていく。
映画は始まりから70年代と80年代のポップス、ソウル音楽がノン・ストップで流れ、画面のリズムとぴったり一致して、かなり乗りが良い。 しかし、ポルノ映画業界のバブルがはじけ、ダークやジャックが身の回りに起きる事件に巻き込まれて行くあたりから、いつのまにか音楽は無くなっている。 始めは、ミュージックビデオ感覚で観ていたが、だんだん出演者達の人生に引きずり込まれていってしまう。
題名がださい事、それから、アダルト・フィルム業界に興味がない事、この二つの理由で観るのを躊躇していた映画だ。(全ての大人がアダルト・フィルムに興味があるかというと、そういう事は無くて、少なくともわたしは例外なのだ。) 確かに、アダルト・フィルム業界を描いた映画であるから、出てくるのは特別に上品な人々という訳にはいかないし、ヌードやセックス・シーンも多少は出てくる。 表面的には、低俗などぎつさがあるが、しかし、いろいろなエピソードを通して登場人物の心の内面がくっきりと表現されていて、下品なイメージはあまり感じない。
2年でスターになり、2年で全てを失ったティーンのバブリーな世界は、ポルノ業界を背景にしたものだったが、これは、どんな世界にも置換えることが出来る。挫折感を味わったことの無い人以外の心にずしりとくる映画です。 栄枯盛衰、挫折、そして立ち直れる強い人間、など人生がよく描かれている。ところどころに、つい、「No, Dont' do that!!」、「No, it's not gonna work」なんて画面の中の人物につい声をかけてしまう、はらはらドキドキのシーンもあり、見応え充分。
バート・レイノルズは、本作品で97年度オスカーにノミネートされた。
dir: Paul Thomas Anderson